今月から毎週土曜11pm、Spike! TVというケーブル局で、TNA (Total Non-stop Action)という団体のプロレス中継が一時間枠で放送されている。2002年、かつてテネシーの大プロモーターとして有名だったJerry Jarrettが、息子であるプロレスラーのJeff Jarrettと共に興した団体だ。発足当時は、毎週PPVのみでの放送という、画期的なことをやってた。その後Fox Sports Networkで金曜の3pmという、誰が見てんだろ、ってな時間帯で放送してたりもしたが、今月からFoxとは全然比べ物にならないほどの条件でSpike!で放送開始した。PPVも毎月続けている。ちなみにJarrett親子は、会社の殆どの権限をPanda Energyという会社に売り払ってるんだけど…。
このTNAという団体、1948年発足のNWA (National Wrestling Alliance)という地方プロモーター達の会員制の共同体と提携し、昔は業界で世界最高峰だったNWA世界ヘビー級選手権を管理しているというのも、もう一つの特徴。そういう理由で、発足当時は、WWE (World Wrestling Entertainment = 世界最大のプロレス団体)とは違う、もっと伝統的なプロレスを少しは見せてくれるんじゃないかと期待していた。
ところが、Spike!で放送開始して以来ほぼ毎週見てるが、何かのめり込むものがない。WWEがやってる様に試合の時間よりもレスラーやその他のキャラで行われてるメロドラマもどきの方が長いということがないだけまだマシだが、試合そのものもそれほど面白くない。要するに、最近では普通になってきた、『レスリング』ではなく飛んだり跳ねたりばかりの試合が多い。
プロレスってのは、試合が始まってから終わるまで選手がどういう流れでその試合を組み立てていくかというとこに面白みがあったりするんだが、TNAだけではなく最近の若い選手の傾向として、どんどん派手な技を出しまくり、一つ一つの技に重要性がなくなってきてる。ジャズやロックのアドリブの様に、メリハリをつけないと面白くなく、いくら技術的に上手いからといって早弾きや派手なフレーズばかりを羅列してもつまらないのと同じ。クラシック音楽も似たようなとこがあるかな。以前、誰だったか、かなり持てはやされてた若いピアニストの演奏を聴いて、上手いとは思ったが、それ以外はなんとも思わなかった。その数日後に、亡くなるちょっと前のVladimir Horowitzがかなりゆっくり弾いたショパンの『英雄ポロネーズ』を聴いて、クラシックが別に好きじゃない自分でも感動したのを覚えてる。要するに勢いや技術ばかりで、『心』って部分で、何も感じられない。
これじゃ試合内容だけ考えるとまだWWEの方がいいかな…とも思うんだけど、でもやっぱWWEは試合よりも退屈な茶番ばかりに時間を割いてるし、そのWWEに独占されかけてる米プロレス界の低迷は否定できないんで、それを考えると、もっとTNAあたりにがんばってほしいってのが正直なところ。
なんだかんだ言ってやっぱ毎週日本食料品屋で新日本やNOAHといった日本のプロレスのテープ借りてる方が面白い。