高校時代の先生。といっても、実は彼の授業は受けたことがない。
ただ、ハンガリー出身で、少なくとも六ヶ国語(ハンガリー語、英語、ロシア語、フランス語、スペイン語、ドイツ語)を喋り、いつも校内で他の先生や生徒達と政治について議論し合ってるおっさんだったということで、高校時代のもっとも印象の強い先生の中の一人だった。また、結構昔のイヤーブックにも載ってて、何十年もあの学校で教えていた。
ある日、寮の自分の部屋に入って来て、「質問がある。」と。渡米一年目の自分は、英語がほとんど喋れなかったが、とりあえずどんな質問か聞いてみると、「漢字で『holy』というのは『聖』と書くそうだな。自分が疑問なのは、なぜ『耳』と『口』と『王』を合わせた字が『holy』になるのかがわからない。」
んなこたぁ、知ったこっちゃないし、知ってたとしても、当時の自分の英語力では到底質問できなかっただろう。
ある日の朝礼のスピーチでは、「俺のとこには相談に来るな。(ハンガリー人のもんで)共産主義を教えてやるから。」などと言ってみたり、とにかく面白く豪快な人だった。
自分が卒業してから3年後、同じ高校に留学した弟の卒業式後のパーティで、多少英語の上達した自分は、初めて、彼とじっくり話せたような気がした。
「当時はあまり英語喋れなかったけど、朝礼で話す度に、なんとなく面白さが伝わってたよ。」
って言ったら、
「英語が話せる奴等でも、そう思ってくれないのが多いんだけどね。」
って皮肉ってた。
自分の母校では、数少ないポジティブな思い出の一人なのかもしれない。
Rest in peace…




