のろけ

二週間ぶりに帰ってきたからといって、嫁さんとのことじゃねぇよ。両親の話。

母は3年前の夏、前の晩まで料理ができてたにも関わらず、朝急に倒れ、病院に運ばれ、午後には逝ってしまった。

当時、父は既に脳梗塞による言語障害を患っていた。家族でさえ、なかなか言ってることが理解できないことが多かった。

それでも、母が逝ってしまうと、ここぞとばかりに突然色々なエピソードを語り始めた父だった。

その多くは、結婚前に仲良かった女性達の話題だったり、結婚後の出張中の、多分母が聞くとあまりいい想いをしないだろうと思われるようなネタだった。そりゃぁそれで、母の生前にはありえない機会だったんで、聞いてて面白かったのは確か。お互い苦労しながら理解し合おうとする中、やっと言いたいことが判った時の喜びが、話をより面白くしてくれたというのもある。

でも自分の心に大きく残ったのが一つあった。

元々、人のことを褒めるのが下手だった父だが、脳梗塞になってからは、前にも増して母への態度がきつくなったらしい。本人は大丈夫だと思ってたにも関わらず母の勝手な判断で入院させられたと感じてたのが原因の一つだと思う。

そんな状態の中での会話について、父が語ってくれた。何度目か(三度目?)の入院から強引に抜け出して、帰宅した翌晩の話だと思われる。

「夜、寝よう思うたらのぉ、横に寝転がってのぉ、

なんかのぉ、『今でも愛してくれとるんか』みたいなことを言うてくるけぇ、

『そりゃぁそうよ』言うたんよ。

そしたら、『よかったぁ…』言うて、ニィ~ッコリしてのぉ。

それだけよ。

あれでもう逝ったけぇのぉ…。」

そんな最後の会話を遺してった両親。

母の時とは違い、自分が殆ど落ち込んでないのは、二人がやっと再び一緒になり、自分も肩の荷が降りたのが大きな理由の一つだと思う。

Jesus loves y’all.

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