1998年のことだったと思う。まだ結婚前だった自分は、ニュージャージーに住んでたが、コネチカットに住んでた彼女(後の嫁さん)のアパートに結構入り浸りだった。
その頃は、行きたいコンサートはなるべく2人で行くようにしてた。レイ・チャールズもB・B・キングも彼女と一緒に行った。
スタンフォードでチャック・ベリーがコンサートをするとのこと。日本じゃまず観れない。行くしかないと思った。
ある日、日本の雑誌で『ロックの神様』として紹介されてたことがあった。だとすると、ロック界におけるニックネームとしては、
親分 = ブルース・スプリングスティーン
王 = エルビス・プレスリー
父 = リトル・リチャード
神 = チャック・ベリー
ということになるんだろうか。
彼女はあまり興味なかったんだけど、当時ニューヨークに住んでた弟が話に飛びついてきた。
自分も弟も音楽が大好き。アーサー・アレクサンダーもトム・ウェイツも、ウィリー・デビルも、みんなあいつのおかげで知ることができた。チャック・ベリーなら、行きたいのは当然のことだった。
当日、弟は、ポケットサイズのジャック・ダニエルを上着の内ポケットに隠し、会場内でこっそり飲んでた。
コンサートは、往年のヒット曲の数々以外にも、結構ブルースっぽい曲もいくつかあり、期待してた以上に楽しかった。
自分は終始、切符に番号が書かれてる座席に留まってたが、酔っ払った弟は、席が空いてるのを見ると、どんどん前の方に進んでたっけ。
コンサートが終わり、会場を出た。
「おめぇは飲んどるけぇ、ええかも知らんが、わしもどっかで飲みてぇのぉ。腹も減ったし。」とか言いながら、入れそうな店を探そうとして歩き始めた。
すると酔っ払った弟が、結構大きな声で言った。
「なぁ、ひさくん。わしらぁ今、チャック・ベリー観たんよのぉ。チャック・ベリーで? わしゃぁ、もう、やることねぇ。死んでもええわ。」
兄弟揃ってニューヨーク近郊に住んでて、幸せだと思った瞬間だった。
RIP…
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