自営業の自分は、お客さんのとこに行かない限り、大抵自宅で仕事をしている。
今朝もそうするつもりだったが、予定外で急に出かける羽目になり、8時半頃家を出た。9時前には目的の場所で用事を済ませたので、銀行での入金など他の用事をついでに済ませて、さっさと家に帰ろうと思った。
車を走らせ始めると、あることを思い出した。ちょっとだけ遠回りをしてバルハラという町に行くと、元ニューヨーク・ヤンキースのルー・ゲーリッグや音楽家セルゲイ・ラフマニノフが葬られている、この辺では有名なケンシコ墓地がある。
そして、あのウィリアム・マルドゥーンの墓もここにあるという。
世界グレコローマン・ヘビー級王者として活躍し、その後初代世界ヘビー級ボクシング王者ジョン・L・サリバンのトレーナーを務めたこともある。1921年には、ニューヨーク州知事から州体育協会の初代理事長に任命され、プロレスとボクシングの発展のために貢献した先駆者だ。テキサスやアイオワにあるプロレスの殿堂はもちろん、国際ボクシング名誉の殿堂にもその中を連ねている。ニューヨーク州西部の出身だが、現役時代にこの付近に移り、以後晩年を過ごしたという。
自分がこのウェストチェスター郡に引っ越して来てから20年目に入ろうとしているが、バルハラ周辺にはベーブ・ルースも眠るゲート・オブ・ヘブンなど他にも大きな墓地が複数あるので、探すのは大変かと思い、なかなか行く意欲がわかなかった。去年、思い切って行ってみた時も、あまりの広さに圧倒され、そのうえ雨も降ってきたので断念した。
だが、この4月にインターネットで正確な場所をおしえてくれたプロレスファンがいたので、それを思い出し、今朝再度向かってみた。

実際の墓は、写真を見ればわかるように、本人だけではなく家族全員用の大きなもので、上に『MULDOON』と大きく書かれている以外は、何も書いてなかった。さすがにドアには鍵がかかってたんだろうし、当然開けてみようとも思わなかった。
我が家から車で10~15分のところに、伝説的存在が葬られていると思うと、長年プロレス史を研究している人間としては、感慨深くならずにはいられなかった。
そうなると、我が家から車で約30分のところにあるウッドローン墓地のことを思い出してしまう。キング・オリバーやデューク・エリントン、マイルス・デービスといったジャズ界の大物や野口英世で有名だが、どうやら日本人初のプロレスラー、マツダ・ソラキチの墓もそこにあるらしい。やはり行くしかないか…。




