自分は滅多に映画を観ない。観るとしても、実話を基にしたものか、ドキュメンタリーっぽいもの、多少現実味のあるドラマなど。SFやホラー、アクションものはあまり興味ない。
そもそも伝記映画に事実なんて求めようとは思っていない。ドキュメンタリー的なものを目的としたものならともかく、あくまで商業的なものなら、事実に忠実かというよりも映画としての面白さに重点が置かれるはずなので、3分の2か、または半分くらいの信憑性があれば十分じゃねぇかなとも思ってる。
そんな自分だが、さすがに今回は「こりゃ映画館で観とかんと後悔するかも…」と思ったもんで、こないだの月曜(11月26日)に行ってきた。前回映画館に行ったのが2009年1月だったんで、約10年ぶり。平日の午前中なら人も少なく快適に観れると思ったんで、11:20から始まるやつにした。
今回観に行った超話題作『Bohemian Rhapsody』も、正直、話の順番とか人物の詳細や登場の仕方が、結構滅茶苦茶だったが、クイーンというバンドとしてだけではなくフレディ・マーキュリー自身の偉大さと、その裏側にある孤独さなどを感じるには、結構いいかも。
実は、クイーンについては決してすごく詳しいってわけではない。だが、小6の時に洋楽にはまり始めた頃には、見ててなんとなく気持ち悪いと思いながらも、なんだかんだで聴き始めるようになり、中3の夏にテレビで観たライヴエイドでの数万人の聴衆を手玉に取る演奏に度肝を抜かれ、改めてその凄さに感動し、数週間後に日本で放送されたリオデジャネイロかどこかでのライブを観てからはすっかりファンになり、渡米してからはカセットテープやCDを買いまくった。中にはドン引きするような曲もあったが、形式に拘らない自由奔放とも思える音楽には、感動するしかなかった。
この映画、正直自分にとってはライヴエイドのシーンが多少長過ぎて、もうちょっと他の話題に時間を割いてほしいような気もしたが、おそらく自分が実際の当日の映像をこれまで何度も何度も観てるからそう感じたのかもしれない。製作者側は、いかにあの伝説の演奏を映画で再現できるかということに重点を置きたかったとかいう話だし、多分世間もそこに注目してただろうから、そういう視点からすると、素晴らしかったと思う。
日本で上映されているのは、曲の時にも字幕がついてるんだろうか。もしついてるなら、これまで知らなかった人達にクイーンを紹介するには丁度いい映画のような気がする。
ちなみに映画館では、案の定自分以外に5、6人くらいしかいなかった。そのうえ最近の(?)映画館は、昔と違って席も大きくリクライニングで、前の方の数列は別として、後ろの方は段毎に壁があって、前後の客がゴソゴソ動いても全く気にならない。なので、始まる直前に、位置的に最も高い最後列に誰も座ってないのを確認し、真ん中の席に移った。周りに誰も見えないんで、途中何度も思い切って涙を流しても平気で、その昔、同級生の女の子が、「映画は独りで観に行くのがええんよ。」って言ってた意味がやっとわかった。(笑)
映画館を出て帰る途中、車を運転しながら、昔のことを色々思い出してた。
自分の渡米一年目のこと。当時ESL(英語が母語じゃない人のための英語の授業)がなかったうちの高校で、初っ端から現地のアメリカ人達と同じ英語の授業に入れさせられた。ある日、アメリカ人の生徒達にとっても難しい単語ばかり並べたプリントを配られたことがあったが、その中で1つだけ、どう考えても英語っぽくなさそうな響きを持ってた『innuendo』という言葉が、ずっと心に残っていた。
そして、大学の2年目か3年目の頃、クイーンが正にその『Innuendo』というアルバムを発表。ラジオで聴いた『These Are the Days of Our Lives』が気に入ったので早速買った。そのアルバムに入ってた『The Show Must Go On』も結構いいと思った。
でも、この2曲を何度か聴いてて、強い違和感を感じた。その内容からして、まるでクイーン……というか、歌ってるフレディが別れを告げてるような気にさせられたし、それも、『innuendo』ってのは『暗示』という意味だったからだ。
実際、あれから半年くらいでフレディは他界し、本当に『Innuendo』が事実上最後のアルバムになってしまった。あの2曲はフレディが書いたんじゃないというのは後から知ったが、当時はアルバム全体が『遺書』だったのかもしれないと思うと、妙に納得すると同時に悲しくなった。
『These Are the Days of Our Lives』の邦題が『輝ける日々』だというのを知ったのは、ほんの数年前のこと。
映画を観て色々思い出し、改めて感じたけど、クイーンってのは、本当に輝いてた。
いつか自分も、「富も名声もなかったが、それでも人生輝いとったのぉ…。」って、神に感謝しながらこの世を去りたいもんじゃ。
Jesus loves y’all.




