50+歳レスラー

[ プロレス ]

先日あるプロレスファンではない人と食事をしてて、「今は『スター』っているんですか?」と聞かれた。確かにアントニオ猪木ジャイアント馬場の時代以来、『スター』ってのは存在しないかもしれない。しいて言えば小川直也が近いのかもしれないが、彼の場合は、結局試合よりも話題性の方が大きい様に思える。相変わらず本当の意味での若い『スター』が育ってないことがわかる。日本ほど酷くはないが、アメリカもそれに近い状況だ。

それを象徴するのが二人の50歳以上のレスラー、日本の天龍源一郎とアメリカのリック・フレアーの存在だ。二人とも大御所で、プロレスファンなら誰でも知ってる。だがファン以外では知らない人も多い。いまだにこの二人がいい試合をして観客の支持を得てるというのは、新しい『スター』が出てきていない証拠なのかもしれない。

天龍とはかつて全日本プロレスで馬場とジャンボ鶴田に続く第三の男として活躍してたが、突如離脱し、移籍先の団体の崩壊後は色々な団体に参加している選手。今月(2006年2月)2日で56歳になり、衰えを隠すことはできないが、それでもリング上では迫力がある試合を見せてくれる。日本人では唯一ジャイアント馬場とアントニオ猪木からフォール勝ちを収めていて、今や『Mr.プロレス』というニックネームで呼ばれるようになった。決して今も業界のトップというわけではないし、若い選手達の中に入るとやはり衰えが見えるのも事実だが、それを上回る貫禄で、その存在が光ってしまう。

元々天龍って好きじゃなかった。というのは、彼が全日で売り出された頃、卍固めや延髄斬りといった猪木の技を使い始めたから。でも各団体を渡り歩く様になり、色々な選手相手にそのタフ差を見せつけ、名勝負を残し続ける姿から、今ではファンになってしまった。

一方、今月(2006年2月)25日で57歳になるフレアーは、80年代初期以来NWAWCWWWFなどの各団体が認定する世界ヘビー級選手権を合計20度以上保持し世界中を周り、今尚世界最大のプロレス団体WWEでトップの一人として扱われ、会場でも最も観客からの声援の多い選手の一人。本来アメリカのファンはシビアなとこが多かったので、ただのロートル扱いでブーイングされまくりでもおかしくない。だが彼が毎試合見せる動きの一つ一つを、まるで古典落語でも楽しむかの様に、観客は大拍手で楽しむ。

フレアーもまた、元々好きではなかった。彼が世界チャンピオンとして日本に来て、鶴田や天龍あたりと防衛戦を行ってたころは、オーバーなリアクションの、悪い意味で典型的なアメリカン・レスラーにしか見えなかったからだ。だが渡米後テレビでプロレスを観続けていると彼の試合運びに『シブさ』を感じるようになり、英語が少しずつわかる様になると彼のキャラってのも理解する様になり、今では最も好きなアメリカ人レスラーの一人だ。ちなみに自分が初めて会ったレスラーも、渡米後5ヶ月目にNorth Carolina州Charlotteの日本食屋の寿司カウンターで隣に座ってきた地元のヒーローのフレアーだった。

二人とも決して大御所だからといって上座に胡坐をかいて座り込んでいる様には思えない。だが若い選手の中に、彼ら程説得力のある試合をする選手が少ないのも事実かも。スター不在が業界の低迷を招いている大きな理由の一つだというのも事実(もちろん他にも多くの理由があるが)。日本でもアメリカでも、これまで『冬の時代』はあったものの、プロレスが完全に衰退しきったことはない。この二人を超える選手なんかしばらく出てこないだろうが、早く本当の意味での『スター』に出現してもらいたいもんだ。