ニューヨーク生まれの広島人というせがれを持つ人間としては、日英両語を話せるように育てるってのが、当然のごとく重要な課題になってくる。
とはいえ、色んな事情で、今年に入って半年通わせた日本語幼稚園をやめて、スクールバスを含め全て無料の現地校に通わせてるわけだが、その学校はもちろん、それから夜まで過ごすベビーシッター宅も、全て英語。
となると、いかに自宅で日本語を徹底するか、ってことになるはずなんだが、うちの嫁さんは小学生のころからアメリカなもんで、やたらと英語が出てしまう。
三歳半のせがれも、以前は日本語ばかりだったが、結局最近じゃぁ家でも英語と日本語の両方を連発するようになった。
二、三週間前、冷え込んできたんで、やっと暖房を入れるようにしたが、ある朝、部屋の中の気温が下がり、自動で暖房が起動した際、せがれがベッドから起きてきて、まず、うちらのベッドの嫁さんが寝てる側に立って、
“heater! heater!”
と叫ぶ。
嫁さんが、「そうじゃね、heaterじゃね。」と言うと、今度は、ベッドの反対側、わしが寝とる方に歩いてきて、大きな声で、
「ヒーター! ヒーター!」
と叫んだ。思わず夫婦で大笑い。それ以外にも、”school bus” と『スクールバス』、”jacket”と『ジャケット』など、いくつかの言葉を、英語と日本語の発音で使い分ける。
最近、よく雨が降るが、せがれと二人で窓から外を眺めたりもする。
「今日も外、濡れとるのぉ…」というと、「濡れてる…? Wet!」って返してきやがる。こっちも、引き下がらないので、しばらくの間、
“wet!”
「濡れてる!」
という笑顔での怒鳴り合いが続く。最終的には、あっちが、ニヤ~っとしながら、「濡れてるねぇ~」って言いながら落ち着く。
同様に、玩具を片づけた後も
“all done!”
「おしまい!」
と言い合ったりする。
だが、数日前から、新しいネタを覚えたらしい。
色んな形の積み木で遊んでる時に、こっちを向いて、
“shape!”
と叫ぶので、いつものとおり、
「形!」
と返し、それがしばらく続くと、ついには、
“in English…., SHAPE!”
などと返してきやがった。
夫婦で顔を見合わせ、大笑いしながら、
「日本語は!?」
って聞き返すと、これまたニヤ~っとしながら、
「か…た…ち…」
それからも似たようなやりとりが続く毎日。
今日も、ある店で、『コアラのマーチ』を見つけ、”bear! bear!”と連発するので、「確かに、熊の一種だし、英語でも koala bearって言うこともあるが…」と思いながらも、「bearっつうか、koalaじゃ。」と言うと、それでも引き下がらず “bear!”と叫ぶもんで、こっちも “koala!”と返してると、案の定、”in English, BEAR!”と叫んできた。これには、店員も、周りにいた日本人じゃない客も笑ってた。
本人も、学校で学んだ英語の言葉を、日本語ではどう言うのか知りたいってのもあるんだろうが、なんとなく、「ママは英語じゃけど、父ちゃんは日本語じゃけぇ、英語も教えてやらにゃぁいけんのぉ。」などと思われてるような気がしないでもない。




