Piano Man

今回の旅行の最大の目的は、朝行われた追悼セレモニー。事前にプログラムの中に自分の名前が載ってたら、出番が来るまで緊張しまくると思ったので、本番まで内緒にしてもらっていた。知ってたのは、イベントの企画担当、司会の二人だけ。企画担当したのは、自分が凄く世話になった先生の息子で、自分の5つ下の後輩でもある。実は今回の自分の旅費を学校側から出すようにしてくれたのも彼だ。

セレモニーが始まる直前に、その先生と再会。「あ、あそこにピアノが置いてあるじゃない。弾けばいいのに。ビリー・ジョエルとか…。」と、突然言われたので、「いやぁ、ここ10年くらいは、教会関係の音楽しかやってなくて、あの頃弾いてた曲のほとんどは忘れてて、まず無理。」などと、しらばっくれたりした。

色んな卒業生のスピーチが終わり、そして、亡くなった先生に関するビデオが上映された。ほとんどは、他の人たちからのコメントばかりだったが、最後の最後で、生前の本人のコメントが入ってたりして、ちょっと感情的になってしまった。っつうか、わしの出番まだなのに、これじゃぁ思い切ってできんじゃろうが…。

ビデオが終わり、自分が紹介された。同じテーブルにいた先生に振り向き、「ごめん、さっきの嘘。」とニヤリ。ビリー・ジョエルの『Honesty』をまず弾き語り。そして、ここの校歌と言っても過言ではない賛美歌『Integer Vitae』をアレンジしたもので『Piano Man』につなげた。もちろんハーモニカ付き。当時は英語もろくに喋れず、チャペルに閉じこもってピアノ弾いてばかりだったんで、その頃いた人達は、今でもこの曲を聴くと自分のことを思い出してくれるらしい。

ビリーの曲なんて、前回人前でやったのは、それこそテネシーにいた頃。でもこの日のために、ピアノはもちろんだが、Happy Hourの相方に稽古つけてもらって、歌も練習しまくった。

『Honesty』はなんとかうまくいった。でも、『Piano Man』の最後の方で急に感情的になり、涙が出て、声がつまり、緊張しまくり、かなり間違えてしまった。練習では全然無いくらいにいけてたのになぁ…。

でもまぁなんとか、みんな喜んでくれてたみたいだ。知らない人達までが礼を言いに来てくれたりした。当時の図書室のおばちゃんが来て、「私はこんなこと滅多に言わないけど、あんたは大好きな生徒の一人だったんだよ。」とか言い、すると同じテーブルにいた先生も、「そうよ。今日のようなセレモニーも、あなたが死んだら、同じようなことをしてもらえるはずなんだから。」とか言うもんだから、また涙を流しかけてしまった。

みんなが解散してく中、7:00pmのクラス会まで予定が無い自分は、まずキャンパスを歩いて周ることに。当時住んでた寮を外から眺めたり、教室のある建物や新しい図書館の中に入ってみたり。昔のままの部分ももちろんあれば、新しい建物もいくつかある。

カメラも持ち歩いてたが、自分が写真に残しておきたかったのは、結局この場所だけだった。


放課後、毎日のようにピアノを弾きまくってたチャペル。当時は毎朝8時からで、自分も他の生徒達と交代で賛美歌を弾いてた。今では午前中授業の合間にチャペルが持たれるだけで、賛美歌どころか音楽自体が無いらしい。このピアノも、椅子さえ置いてなかったし、もう誰にも弾いてもらってないんだろうな。

キャンパスを去り、ふと思いついたのが、世界で最も人気のあるウィスキーの一つ、ジャック・ダニエル。この村から1時間以内で行けるリンチバーグという町にあり、高校時代は行くチャンスが無かったんで、せっかくだし行ってみることにした。ナッシュビルまで迎えに行った同級生も行きたいというので連れてった。

リンチバーグの町のバーベキュー屋でランチを済ませ、蒸留所に向かった。ビジターセンターや売店などもあり、しっかり観光地になっている。


工場ツアーにも参加してみた。結構楽しかったが、残念なことに試飲は無い。実は、このムーア郡、ドライエリアといって、酒を売るのが違法の地域。そんな場所で、それもテネシーのド田舎の信号機が一箇所しかないこの町で、世界的なウィスキーが造られているのも凄い話。

リンチバーグを後にし、再びベルバックルへ。夕べ二次会をやった友達の家でくつろぐことに。試飲ができなかった我々二人は、早速ジャック・ダニエルをロックで一杯もらった。みんなで外に座って喋ってたら、その家の友人が、「そうだ。ヒサハル、ピアノ聴かせてくれ。」と言うもんで、家の中に入った。なかなかいいベイビーグランドが置いてあった。数曲弾いたり、ロックっぽいのを連弾でジャムったりした後、彼が一言。

“Hisaharu, you’re the piano man!”
素直にうれしかった。

夜は、これまた別の同級生の家でクラス会。同級生に限ると、夕べの全体同窓会の方が多かったけど、別の年の卒業生や配偶者とかも来て、これまた楽しかった。

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