エヴァ・キャシディってのは、1996年に33歳の若さで亡くなった歌手。ワシントンDC郊外の出身で、地元では結構活躍したらしいが、生前出したアルバムは一枚だけで、全国的には無名だった。
だが没後数年経ってから、なんと海の向こう、BBCで彼女の曲が流されたことから、イギリスでヒット。そして2001年、ABCでドキュメンタリーが放送されてからアメリカでも人気を得たらしい。
この国で最も有名なオーディション番組で、『American Idol』ってのがある。今年で9年目だが、実は今シーズン初めて見た。確か初日は、その人気番組とやらに、どんなつまらん連中がテレビで恥をさらしに出てくるのかってのに興味があって見てたような気がする。
だがシカゴでの予選、その中の一人、すげぇ気になったのがいた。
その24歳の子は、予選通過はもちろん、ハリウッドでのトップ24選出にも残った。これまでこの番組を見たことがなかった自分も、彼女が脱落するまで、見続けることにした。ちなみに、彼女自身、この番組を見たことがなく、シングルマザーとして、一昨年生まれた息子に、「自分が通ってきたような生活をさせたくないから。」という理由で出たらしい。
この番組って、ティーンや学生などの子供達が見るポップスやR&B中心の番組だと思ってたし、実際に優勝して活躍してるのも、自分からすれば、ミーハー向けの歌手が多い。その割には、今回上位に残ってる中には、それっぽいのが少なかったような気がする。純粋にロック系っぽいのも何人かいた。
その中でも、クリスタル・バワーソックスには圧倒された。ジャニス・ジョプリンやボニー・レイットの力強い響きやブルース風のシブさを受け継ぎつつも、時折、優しさのある歌声で聴かせてくれるっつうか。
彼女が決勝まで残った時点で、多分優勝はしないんだろうな…と思った。っつうか、優勝してほしくなかったってのが正直なとこか。どうせこの番組を見てるのは、彼女の歌では喜べそうにないガキどもの方が多いと思ったからというのもあるが、それ以上に、充分彼女の能力を全米に見せつけることができたんだから、『アメリカン・アイドル』などという肩書きが邪魔臭くなりそうだったからだ。
夕べ結果発表が放送されたが、案の定彼女は準優勝。そりゃぁそれでええ。クリスタルは今後も充分やっていけると思うし、優勝した方は、声はいいが、いつもビビった表情だしカリスマのかけらもないんで、どっちかというと、そいつの方が何らかのタイトルが必要だと思う。
そのクリスタル、これまで影響を受けたのは、前述のジャニスやレイット以外にも、メリッサ・エスリッジ、アレサ・フランクリン、シスタ・オーティスなど、往年の名アーティスト達。そしてエヴァ・キャシディもその一人らしい。
エヴァの遺族による公式サイトには、一生懸命頑張っているローカルアーティスト達のライブへ行き、そして気に入ったら本人達にそれを伝えて応援するように呼びかけられている。
そんな中で、エヴァの遺伝子を持って、ドサ周りから全国レベルに出てきたのが、クリスタルなのかもしれない。
ある人が、「エヴァにとって悲劇なのは、若くして死んだということよりも、今の人気を生前経験することができなかったことかもしれない。」って言ったらしく、実際そうなのかもしれないんだが、今の自分の気持ちを、よく使われる英語の表現で言わせてもらうと、「Eva would have been proud of Crystal.」、日本語だと多分「(もし生きてたら)エヴァもクリスタルのことを誇りに思ってたはず。」ってとこかな…。
実際、現時点で、多くの人達が既にクリスタルとエヴァを比べている。自分も、エヴァの名前くらいは聞いたことがあったが、これまで集中して彼女の曲を聴くことがなかった。彼女の音楽が、クリスタルの人気によって、今再び多くの人達に注目を集めようとしている。
そういう理由も含めて、クリスタルには、レコード会社の圧力や持病の糖尿に負けずに、これまでどおり好きな音楽を続けていける環境の中で活躍してほしい。




